【プレスリリース】次世代3D半導体デバイスの省エネルギー化に貢献する新規膜とその接合プロセスを実証
研究のポイント
•新規接合膜によりCMP*?プラズマ不要での300mmウェーハ接合の実証試験に成功
•さらにウェーハ接合状態での高放熱性とともに、研削工程への耐久性を確認
•新規膜を用いた高放熱、低コスト化によって次世代先端デバイスの実装加速に貢献
*CMP(Chemical Mechanical Polishing、化学機械研磨)は、半導体製造においてウェーハ表面の平坦化を担う工程
概要
uedbet体育_uedbet体育投注-彩客网彩票推荐 総合学術高等研究院 半導体?量子集積エレクトロニクス研究センター ヘテロ集積研究拠点長 井上 史大准教授とそのチームは、株式会社KOKUSAI ELECTRICとの共同研究により、高熱伝導な新規接合材料「ALD-Al?O?」を用いた300mmウェーハの成膜、そのキャリア接合界面への応用に成功しました。
本研究は、次世代の半導体3Dデバイス構造に不可欠な「Backside Power Delivery Network(BSPDN)」や「Reconstructed Die-to-Wafer(D2W)Hybrid Bonding」への適応を目指しており、従来材料での熱拡散性の不足、接合プロセスの低コスト化、十分な接合強度の確保といった課題を克服するために実施されたものです。
今回の研究対象であるALD-Al?O?は、従来のSiO?やSiCNに比べて高い熱伝導率を有しており、またCMPやプラズマ活性化を必要としない直接接合を可能とします。これにより、工程の簡略化および大幅なコスト削減が見込まれ、BSPDNなどの3D実装構造において、信頼性の高いキャリアウェーハ構成が実現可能となります。熱放散課題解決の足掛かりとなれば、今後の3Dヘテロ集積構造における高密度かつ省エネルギー化が見込め、さらなる半導体エレクトロニクスの発展に寄与するものとなります。
この成果は6月2日(月) ~ 6月5日(木)に韓国?釜山で開催される半導体配線技術に関する最大の国際会議28th IEEE International Interconnect Technology Conference (IITC 2025)で発表されます。第一著者、発表者はuedbet体育_uedbet体育投注-彩客网彩票推荐 理工学府 博士課程前期に在籍する北川颯人さんが務めます。
本研究は「JST研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)産学共同JPMJTR241A」によって執り行われました。
研究詳細
本研究では、300mmシリコンウェーハ上に原子層堆積(ALD)法により5nm厚のAl?O?膜を成膜し、CMPおよびプラズマ処理を一切行わずに直接接合を実現しました。ボイド(空孔)フリーの接合界面が形成されたことを透過電子顕微鏡および超音波観察で確認しました。接合強度は、uedbet体育_uedbet体育投注-彩客网彩票推荐が主導し国際規格化を進めている不活性雰囲気下でのダブルカンチレバー法(DCB)によって評価され、十分な強度が得られたことを示しました。さらに、TDS(昇温脱離)を用いた解析から、Al?O?膜には成膜温度に依存した水分およびオープンスペース量の違いがあり、これらが接合界面のボイド形成や接合強度に大きく影響することが明らかとなりました。膜中の水分量が過多な場合、接合強度の飽和や空孔形成を引き起こす一方、適切な水分は接合形成に寄与することも確認されています。また、ALD-Al?O?膜は従来のSiO?よりも高い熱伝導率を記録しました(図2-b)。これにより、接合界面における熱抵抗の低減が可能となり、BSPDN構造の熱マネジメント向上に寄与することが期待されます。本技術は、従来の接合材料に対する強力な代替案となると同時に、3D実装における熱的?機械的課題の克服に資する有望なプロセス基盤となります。


論文情報
学会名 :
28th IEEE International Interconnect Technology Conference (IITC 2025)
論文タイトル :
Novel Bonding Interfacial Material for Carrier Wafer of BSPDN & Reconstructed D2W Integration(S03-05)
発表者 :
Hayato Kitagawa 1), Taisuke Yamamoto 1), Jenyu Lee 2), Shuntaro Machida 2), Kazuhiro Yuasa 2), Fumihiro Inoue 1)
1) YOKOHAMA National University, 2) KOKUSAI ELECTRIC CORPORATION
資料
研究者プロフィール
井上 史大
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関連リンク
お問い合わせ先
<研究詳細について>
総合学術高等研究院 半導体?量子集積エレクトロニクス研究センター ヘテロ集積研究拠点長/
大学院uedbet体育_uedbet体育投注-彩客网彩票推荐 准教授 井上 史大
メールアドレス: inoue-fumihiro-ty ynu.ac.jp
<報道担当>
リレーション推進課 広報担当
メールアドレス: press ynu.ac.jp
(担当:リレーション推進課)